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平成22年6月1日(火)〜3日(木)
文教常任委員会視察
1.
大阪府立西成高等学校(大阪市西成区)
2.
私立立命館小学校(京都市)
3.
池田市立池田中学校(大阪府池田市)
4.
小学校区に一つある総合型スポーツクラブ・校庭の芝生化(神戸市)
1 大阪府立西成高等学校
様々な困難を抱える生徒が集う学校で、粘り強い指導を続ける教師たち。
議会も行政も学校現場の生の姿を直視し、そこからわたしたちは何をすべきか、を探る。
【沿革】
西成区民の普通科高校誘致運動4万人の署名を受け、昭和49年に開校した。開校以来、部落解放、在日韓国・朝鮮人解放、女性解放、障害者解放を4本柱として反差別、解放教育を実践してきた。
平成15年、それまでは普通科高校だったが西成高校は、普通科総合選択制に改編した。普通科総合選択制とは1年生次は普通科、2年生から1週間の授業コマ数のうち一定割合を選択制にするというもの。まずエリア選択によって自分の望む方向性(エリア)を定め、それに伴った選択科目を選んでいく。エリアの時間はその方向性の基礎部分を学ぶ。2年生では6コマ分がエリア、4コマが選択になる。3年生では2コマエリアで16コマが選択となる。なお、エリアとは、「人文・理数」「スポーツ・健康」「福祉・人間」「保育・教育」「IT・キャリア」「造形・表現」の6つの方向性がある。
また、平成18年発足の知的障がい生徒自立支援コース(学年3名枠)もあり、就労やビジネスマナーの修得、基礎学力保障などの時間が設置されている。
西成地区には釜ヶ崎地区があり、そこは職を求めて多くの日雇い労働者が集まる地区である。西成高校のあたりは昔からの下町であるが、やはり生活保護、路上生活者も多く、西成高校は荒れが目立つ学校であった。また、現在も生徒の半数の家庭が生活保護であり、また、片親家庭である。そこで4年前から「格差の連鎖を断つ『チカラのある学校』」を学校の大目標(ミッション)に掲げ、厳しくて温かい教育を実践している。
@ 反貧困教育
平成19年度から総合学習の時間を「反貧困」を軸にした人権総合学習に再構築し、7つ視点と20のテーマの教材を作ってきた。
7つの視点とは
1、 自らの生活を意識化する。
2、 貧困を生みだしている社会構造に気付く。
3、 「西成学習」を通して、差別と貧困との関係に気付く。
4、 現在ある社会保障制度について理解を深める。
5、 非正規雇用労働者の権利に気付く。
6、 究極の貧困である「野宿者」問題を通して生徒集団の育成をはかる。
7、 「新たな」社会像を描き、その社会を創造するための主体を形成する。
である。そして20のテーマとは
1、生きる力をもつ子どもたち〜ダッカのストリートチルドレン 2、ネットカフェ難民からセーフティネットを考える 3、ワーキングプアからセーフティーネットを考える 4、シングルマザーについて 5、「ホームレス中学生」から考えよう 6、貧困ビジネスについて考えよう1,2 8、高校生の無保険問題を考える 9、日雇い派遣について 10、こんな時はどうするの?〈労働者を守る法律や制度〉 11、突然、解雇されそうになったら?! 12、西成差別について考えよう 13、西成のことを知ろう 14、野宿者の生活を知ろう 15、「こども夜回り」から考えよう 16、「不公平なイス取りゲーム」から考える 17、「不公平なイス取りゲーム」の解決策? 18、識字から学ぼう 19、貧困スパイラルを断ち切ろう 20、差別を見抜く力
が現在できている授業テーマである。視聴覚教材や自主作成プリントを使って、2人の担任が生徒と対話することで進められるという。
なお、この教材は本になった。『反貧困学習-格差の連鎖を断つために』(西成高校 著)解放出版社、である。
A 中退率・留年率の設定 「前年比20%マイナス」
・学びなおしの授業・追認の考え方を変えて、意欲、態度をさらに重視するようにする
・家庭へのアプローチ(家庭訪問促進、保護者との関係等で課題ある生徒の支援組織立ち上げ)
・包括的キャリア教育のさらなる推進
平成20年度14.3%・86人→平成21年度10.8%・66人(前年度比20%削減達成!!)
(平成21年度データ 留年46人、中退66人うち20人授業料未納による、長期欠席127人)
B知的障がい生徒自立支援コース
普通科総合選択制のカリキュラムを基本にしながら、生徒個々に応じた学習「自立学習」を設定して、統合教育ときめ細やかな対応を両立させている。自立学習は1年次0〜5時間/週、2年次2〜7時間/週、3年次2〜6時間/週。内容としてはマナー、自己表現、お金の管理の仕方、事業所の見学、実習などになる。また、近くの就労支援施設に就労訓練に行くこともある。そのほかに2,3年次は選択の中に「自立学習」を設け、2年生は園芸、3年生では近隣施設で就労訓練などしているとか。視察した時には2人の生徒が2人の先生にコンピュータを使って電車に乗って目的地に行く、行程の作り方の勉強をしていた。
また、さらに全学年で夏休み中にも5〜10日間の就労支援施設で就労訓練をし、企業実習にも取り組んでいる。
このコースの入学応募資格は療育手帳所持。評価は個人内絶対評価にして、生徒に応じた到達度を基準にする。欠席が混まなければ留年はないだろう。
委員会の質疑などから)
・埼玉県は全国平均より中退率が高い。そこで県は中退率を下げることを県の5カ年計画の中にも数字を入れて目標化している。だが、中退率を目標に掲げることに対し、自分は常々疑問をもっていて、「やる気のない生徒でも入試が1倍を満たなければ全入、というのがむしろ中退率を上げるのである。入試できちんとけじめをつければ中退はそれほどでないもの。だから、単純に中退率を目標設定するのはおかしい。それに公立学校の中退率を競争したって、都市と地方の県では(私立の役割からして)違うのだから、比較にならない。大阪のみなさんもそう思わないか?」 という感じで質問した。それに対し、「そもそも高校進学率が96%という事実が『もう定員割れの場合はどんな生徒でも全入させるのが日本の実態なのだ』という証明である」 とまずは言われた。その現実を受け入れるところから現場の学校は始まるしかないのだ、ということなのだろう。
・入試は大阪府は埼玉のように2回チャンスがあるのでなく1回チャンスの入試。西成高校は前期試験で取る。なお、倍率は常に1倍を超えている。1.25倍、1.09倍、1.06倍(17,18,19年度)来年から後期に統一? らしい。 なお、これは障害をもつ生徒が開校以来100人以上すでに入学してきている、ということから示唆されるものもあろう。ならば、きっちりと自立支援コースを作って、個別の指導を充実させたほうがよい、と判断されたのかもしれない。自立支援コーディネーターも配置され、ハローワークや職場との連携もそのほうができるのだろう。
・親も西成高校、子も西成高校という生徒もいる。親の時代は荒れていたので何とか今を見てほしい、と奮闘している。そして、西成のプライドを持ってほしいし、持てるように改革中なのだ。払しょくされない風評被害を前に校名を変えようか、との声も出たが、「いや、今、この場から上がっていこう!」ということになった。
【藤本感想】
西成高校の歴史を知らずして周囲の者が何かを語ってはいけない、とまず感じた。生徒たちを成長させようとする試みはその歴史を十分踏まえ、その上に立案されたものであった。「キャリア教育」といえば、国が推奨し始めた流行りもの、という感じを自分などは抱いてしまう。結局キャリア教育(に逃げ込むの)か!? つまりは机に縛り付けておけない子どもを、しかしながら、高校にはいさせないといけない現状〈中退率がうんぬんされ注目された被害者として〉の中で考案された、苦肉の策がキャリア教育ではないか? いや、もしかしたらゆとり教育の考えの中で「何になりたいか」を見据え、その手段としての学校選びをさせるにあたって、自然に注目された手法なのかもしれないが・・・。とにかく、最近の言わゆる「キャリア教育」には懐疑的な私であった。しかし、この高校のそれは生活の実態と必要から至ったカリキュラムであった。 そして、現場の教師は、とにかく受けて、そこから何かを産まねばならないのである。我々のようにああだこうだ言っていても、子どもはやってくるのである。
どうやって不当な解雇に抗議するか、どうやって社会保障を受けるか、どうやって格差の固定化から抜け出すか・・・・。保護者があって周囲の人々がいて、そして、生徒個人がいる。その関係性の中で大勢に流されず、力をつけて自立する。その力をつけるのが「西成教育」であった。
トイレには「たばこを吸わないよう」呼び掛ける張り紙が貼られていた。授業中でもだらだらと教室を出てしまう生徒もいた。休み時間には教師が巡回もしていた。(これは自分がいた中学の荒れた時期と同じである。)それでも、先生方は悪戦苦闘しながら生徒たちを何とかしようと毎日毎日頑張っておられる。嘆いても何も始まらない、目の前にある現実は嘆いても何も変わらない。現実を直視することから始める。子どもたちを、取り巻く現実から一歩前へ押しやってあげる。そういう現実主義の教育が西成高校の教育であった。その愛情というか思いがひしひしと伝わってくる視察であった。視察した議員さんもみんな、現実の大変さを思った、ようだった。そのうえで 勉強ができない、その発端は小学校にある、その小学校教育をもっと充実させて、落ちこぼしのないように人を充てるなどすればよいのではないか、という意見が聞かれた。
2 私立立命館小学校
低迷し迷走する公教育を尻目に、私立学校は独自の工夫をしながらさまざまな実践をしている。
早寝、早起き、朝ご飯や百ます計算、辞書をとことん使う手法など、
むしろ今までの教育が大切にしていた基本的生活習慣の確立を重視し基本を徹底することで
先端を走る私立小学校を見て、公教育は何をすべきか、を探りたい。
【沿革】
一昨年度、小学校が6年生まで揃ったという新しい学校。(2006年開校)
1,確かな学力の形成
2,真の国際人を育てる教育
3,豊かな感性を育む教育
4,高い倫理観と自立心を養う教育
の4本の柱を立て運営される。副校長の陰山先生の談として「日本の今までの教育の伝統を活かしながら受験という足かせを取り払い、全く新しい教育を根本から築き上げたい。」と学校案内にあった。そうか!教師が理想の教育をするチャータースクールを作ったらいいなぁ、と自分も思っていたが、本校は資本と素質を得て、新しい教育を作ろうとしているのだ、とわかった気がした。6,3,3制を4,4,4制に組み替え、初めの4年間は「根っこ」の時期として読み、書き、計算、「辞書引き授業」「そろばん」「漢字の時間」など基礎基本の徹底を図り、その他に英語の授業、次の4年間には教科担任制、定期テスト、寺子屋の時間に補習・補講、学年縦割りのハウス制度の活用もしている。次の中3〜高3に当たる4年間は進路実現のための4つのコースで中等教育をレベルアップさせている。
以下具体的に列挙すると、
2,真の国際人を育てる教育
立命館アジア太平洋大学の留学生と交流するワールド・ウィーク。姉妹校の北京大学附属小学校との相互訪問。小学1年生から週2〜3時間でティームティーチングによる英語活動(英語で行われるらしい)。モジュールタイムもT・Tで。
3 豊かな感性を育む教育
音楽、図画工作は専科教員による授業。劇場設備を備えたアクトシアターも持っている。陶芸の部屋もある。また、小4まで週1で読書の時間があり、読み聞かせがある。
4,高い倫理観と自立心を養う教育
全校児童を各学年6つの色に分け、その縦割り集団をハウスと呼ぶ。ハウス清掃、運動会、ハウス遊びなどの活動で異年齢の集団での活動をさせている。体育の授業も専科教員。
視察概要)
4本柱の一つ「確かな学力の形成」について。
まず、時間割は1,2年生は6時間授業、3年生から7時間授業。1コマ40分。朝の会は8:10〜8:25,モジュールタイムが8:25〜8:40、1校時8:45〜9:25,休み時間は10分、中休み20分、昼食と休みで1時間、清掃15分、6校時14:25〜15:05,寺子屋の時間が15:05〜15:25。寺子屋の時間はその日に習ったことのおさらいだそうだ。
・モジュールタイムを見学した。7分×2で四字熟語と百ます計算をしていた。モジュール授業とはスピードとリズムを大切にした音読、名文の暗唱、百ます計算をやって大脳の前頭前野を活性化する時間だ。NHKで「にほんごであそぼ」があるが、あれである。百ます計算では、一列終わるごとに児童が「ハイ」「ハイ」と手を挙げて、教師が「よし」と認めてやっていた。遊びの感覚で学ばせ競わせて学ばせている。意味がわからない言葉は辞書を引かせ、そのページに付箋紙を貼らせる。辞書の解説でわからない言葉が出ると、それも調べさせていく。際限ない作業だが、子どもにとっては学びとなるし、少なくも一般小学校の児童より多くの語彙を習得している。先生は教科書や辞書も拡大して示せる電子情報ボードを使いこなしている。また、学校案内によると珠算日本一の方からそろばんを習っているらしい。また、ロボティクスという時間を年20時間設定している。
・定員は1学年120人で倍率は10倍ほど。年間に100万円くらいかかる。
モジュール授業の様子
モジュール授業は毎日、2科目ずつ実施
【副校長 陰山先生のお話から】
・土曜日も授業をやっている。陰山先生は土曜は大人も子どもも休んだ方が幸せだから休みにすべきと考えている。
・95年には米国留学1位だった日本が2006年にはインド、中国、韓国に次ぐ4位であり、GDPが2位と思っていた日本だが、中国に抜かれ、1人あたりでももう23位だ。日立だ松下だ日本の8つの電気会社の売り上げに韓国のサムスン1社が勝っている。サムスンの採用足きりはTOEC900点,ソニーの管理職試験資格は650点。英語は中1からの日本に対し韓国は小3から習う。英語をやろうとすると日本は「それよりも日本語だ。」という論議になってしまう。日本は国際的に引きこもりじゃないか。国債が暴落したら中国企業による日本の会社買いがはじまるぞ。しっかりしなくてはいけない。
・日本の義務教育は進んでいるが、大学教育がよくないのだ。週4〜5回小学校で英語を習う中国では小学校で1200単語を覚える。日本は中学でも1000〜1200だ。
・学力を上げるのは、やろうと思えば簡単である。まず、「書かせる」作業を入れねばならない。脳の活性化だ。また、忘れさせない工夫が日本の学校ではされていない。エビングハウスの忘却曲線に指摘されるように繰り返せば、忘れなくなる。例えば、漢字の8割、百ます計算2分以内を週3回やらせ、7回前後繰り返す。そうすると定着するものだ。そういう点で、よい授業とテストの点を上げる授業そして学力をつけさせる授業は別ものだと思ってかかった方がよい。ということで、「結果を出す」に特化してやると教師もやり易いだろう。
・教育はいつも2つのものが戦っている。まずは、組合vs文部省の時代、次に教育界vsその他の人々、今は日本vsアジアと心すべき。
・早寝・早起き。朝ご飯は基本。基本的な生活習慣、もっと言えば、よく寝ることが大切と思う。テレビの視聴時間(日本の中学生は2.7時間/日で最悪)、睡眠時間、朝飯を管理すべき。心の荒れ、も睡眠不足から来るのではないか?寝る子は育つ、というが、日本人が睡眠をしっかりとっていればもっと平和なのではと思う。高度経済成長期の大人たちも家で7時のニュースを見ていたでしょ。
・教育はやはり都道府県が責任を持つべきである。知事と教育長がしっかり話し合うこと、そしてがんばっている教師を報い、活かすことが大切だ。
・立命館小学校では初めに生活表をかかせ、生活習慣の大切さを徹底的に啓発し、その後も年に何回かチェックを入れている。眠るのも能力であって、小さい頃は決まった時間に床につかせて眠る練習をさせる時期なのだと思えばよい。実は韓国には不登校はない。徴兵制が乱れがちな生活習慣をリセットする役目をしている?遅くまで働かさない条例でも作ったらよいと思う。
・生活習慣の管理は時間の管理である。その逆もまた真なり。時計を見る習慣のある人が時間の管理ができる人である。
・モンスターペアレンツは苦しんでいる人だから本当は話し合うことだが、時間もない。次善の策になるが情報の共有化が大切。隠さないで徹底的に公開し、例えば学校便りなどにのせて学校で考え、みんなで対処し、みんなの問題にすることで常識的な正解が導き出される。
陰山副校長とのやりとり
【藤本感想】
よい家庭に育つ子弟が、優れた教育環境で基礎基本を大切にされながら学ぶとどうなるか。きっと立命館小学校のようになるのだろう。教育改革は「ゆとり」を目指したが、それは教師が望んだことではなかった。が、めざす「ゆとり」のために教育は様々に改革?され、揺れ動いた。いま、例えば埼玉県が高校入試を一回にすることなども「戻ってきた」ことだ。大切なことは、やはり変わらない。指導から支援、と言われたが、やはり「指導」なんである。
昔から、「基礎基本」とか「基本的生活習慣」とは教師が立ち戻る言葉であった。これができない家庭は荒廃していた。子どもは荒れているか、だらしなかった。ドリル学習も考える学習によって一時敬遠されたが、基礎を習得するにはやはり必要で、陰山先生はそれらを強調しておられるのだ。脳科学も早寝、早起き、朝ご飯を推奨するが、リズムとスピードと競争が子どもを楽しく習得させている。そこに私立ならではの電子情報ボード、ティームティーチングなど豊富な教員、優秀で専門的な人材、時代を見た英語の取り組みが加わったのが立命館小学校だ。これらの取り組みは公立学校は真似をすべきである。ただ、モンスターな保護者や指導しにくい児童がいてどこまでできるか? 施設の整備を市長部局が担保してやり、教師をしっかり当ててやれば、小学校ならまだ、できる気もするのだ。自分はチャータースクールを教師たちによって設立したいと考えていた。資金が豊富にあれば、(英語教育を除いて)こうなるのではないか。また、芸術については、我が子の幼稚園を思い出した。この幼稚園児の描く絵は非常に豊かである。先生に伺ったところ「興味関心が持つ範囲で時間を十分とって描かせる。」のだそうだ。また、言葉遊びも幼稚園では実践していた。カルタ遊びを通して格言など覚えていたし、発表会では草野心平などのリズムある詩の群読、何曲もの歌の合唱などもやっていた。やればできる、のかもしれない!! ルクセンブルグの話があった。小さな国ゆえ金融国家として立脚するべく、まずルクセンブルグ語、次ぎにドイツ語、そしてフランス語で学年があがるに従って使う言語も変えている。大変だけどできているのだ。そういう点で、公立だからといって、できない、と諦めるのはまだ早い、そう感じた。
3 池田市立池田中学校
(昔荒れていたという)公立中学校が、地域との連携を学校側から発信し、土曜授業の実践をしている。
その詳細は? あわせて、そういう実践をしている先生方に伺いたい。
ならば土曜日を復活する方向を望むか? というのも、自分は月に2回分の土曜日は学校を復活して、
授業、行事(の準備)、部活など行ったほうが生徒にとっても国にとっても良いのだ、と思っているから。
このままでは授業だけの学校に成り下がる。天下の中学校であってほしい。
【概要】
「ご通行中のみなさまへ、夢を育てる学校創りにご協力ください。」というチラシがある。B4版のカラー刷り印刷。池田中学校MTP(マイタウンプロジェクト)スタッフ募集のチラシである。子供、保護者、教師に「地域の力」をプラスして、次代の池田を担う生徒たちを育てていこうという企画は平成18?(20?)年度から始まった。 チラシにいう。
募集要項: 資格:池中を良い中学校にしたいと思われる方
報酬:ございません
生徒の具体的なニーズはやはり学力向上だ、そして、学力とは極めれば人間関係を作る力だ、ということになって地域に呼びかけを行った。また、生徒に地域を意識させたい、という気持ちもあった。 「地域の力を再編し、学校を核にした地域づくり」といえばかっこいいが、きっと右往左往の暗中模索から生まれてきた今の方向性なんだと思う。
今は土曜日に地域のボランティアがたくさん来て、授業の手伝いをしてくれている。土曜日は8時半〜10時まで、部活開始の前の1時間半。 最初の30分は教師が授業、そのあと1時間はアシスタントティーチャー(大学生や地域の方々)が個々に教えてくれる。教師の技量とボランティアの熱意がマッチする。土曜授業だからDJと呼び、発展的にジョイントDJ(中3の入試直前プリント学習)、DJB(中1生1学期の小学校中学年算数克服・Bはベーシック),ETC(英検3級を目指す授業)がある。そのほか、各教師が中3ともなると放課後も補習をしているとか。DJの場所は多目的室。
質疑などから)
・池田市では中学校が6校あるが、そのうち3校が土曜授業を行っている。残り2校は地域ボランティアによるもの。池田中のみ教師発意のもの。
・生徒は希望者を募ると140人くらい応募があった。しかし、多目的室に入れるのは90人くらい。絞ったのかどうか・・・・(藤本忘れてしまった。)
・生徒全員参加ではないので、DJの内容は普段の授業を代用するものではなく、補完する内容にかぎられてしまう。きっと「時間があったらこういう導入でやってみたいんだけどなぁ」とか「こんなことも発展的にやれたらもっと引き込めるのに。」という内容なのだと想像した。
・このDJに参加してくれている先生は職員38人中30人。うち1日あたりでいうと10人くらい来てくれる。
・生徒はETCの場合、55人参加。DJBは40人参加。1学年生徒は全部で170人くらいいる。
・DJBは中1生徒対象で40人参加、30分分数・小数などなどを教え、そのあと個人学習。中2も若干いる。1学期に行い、連続講座のように1学期に数回行う。
・教えに来てくれるボランティアさんは60才以上の高齢者が多い。その他、大阪大学にもお願いしていて、学生もたくさん来てくれる。 埼玉でもスグにできること、肝心なことは何でしょうか? と尋ねたら「大学生ボランティアに活躍してもらうこと」をシステムにしたらいかがですか、という示唆をいただいた。
・ETCは英検3級合格を目指しているのだが、家庭教師の「トライ」の講師にきてもらってる。69名が受検、61名が一次試験合格、二次試験は60名が受験して55名が最終合格して3級を取得した。今年は、昨年度のアシスタントティーチャーで英語が極めて堪能な方に指導をお願いしている。
・DJは2学期から始めている。親の承諾書を提出させている。
・MTPはいまはNPO組織になった。
ボランティアの方々もいらっしゃる畑と小屋
【先生方に「教育行政に、そして、議会に何を望むか!」伺った】
先生曰く
・大学生を日常的に入れること。今現在池田中では1日4人が来てくれている。金髪の生徒も不登校の生徒もいるが、若いお兄さんお姉さんが来ることで中学校に「新しい化学変化」が起きている。
・自由に使えるお金が欲しい。学校としてはボランティアに謝礼も出せない。手当も出ない。そのくらいは何とかしたい気持ちになる。なお,DJに出る先生方も勿論ボランティアだ。一方、部活に出れば手当がある。
・教育成果を数字だけで判断しないこと、消費者に対するサービスと同じに考えないことを望む。平均として出た数字で評価はできないもの。見捨てられ、切られた人間がいてはいけない。1人1人を救おうと努力を重ねるのが教育の営みである。
○こんなにやっているのだから、システムにすべきと思いませんか、と伺った。
先生答えて曰く「システムにしたい。すべきとも思う。ただ、お金も必要だ。文科省の学校支援地域本部事業補助金では補助があるといっても臨機応変、自由には使えない。
・若い先生には、団塊の世代の先生とは違った別のやり方があるのだと思う。それを伸ばしたい。
・池田中はフリースペース+大学生招待のセットで、展開している。中3の放課後は各クラス結構補習している。
・学校選択制の是非を問う逢澤議員に対し、教頭先生は「学校選択制は駄目だと思う。地域と一緒に学校を作るのに、選択制では地域がばらばらになってしまう。ある時期、選択制にすれば学校同士で競争して切磋琢磨することで良くなるのではないかという新自由主義的な考え方があったが、それではモチベーションが上がらないというのが私の意見である。子どもを育てるとともに、親も町も育てていくべき」
また、校長先生は「自分の立場からは言いにくいが、ハッキリしているのは、学校教育は消費者に対するサービスとは異なるということ。子どもがしたくない、親もやらせたくないことを時にはあえて課題としてやらせる(野球の千本ノックのような)のも教育だと思う。そこを見誤られて『あんなしんどいことをさせる学校はダメだ』という選択をされてしまう可能性が、なきにしもあらずである。」
・今後のDJについて…打ち上げ花火的に、現在の試みを終わらせたくはない。教員は転勤があるので、学校のメンバーは常に変わる。ただ、地域の方からの後押しがあれば、持続可能ではないか。「生徒にええことは何でもしよう」「あかんことはすぐ変えよう(修正主義)」の考え方でやっていると、教える側も面白くなってくるし、感動する。また、マイタウンプロジェクトが、横山前校長が退職したと同時にNPOになった。そのため、この試みを学校として維持継続していかなければという負担を、過剰には感じなくなった。
・学校と塾との関係について・・・・対立関係ではないと感じる。塾の先生が、池田中のアシスタントティーチャーをやってくれている。最初は戸惑ったが、一緒にやることで子どもたちのためになるならと思ううちに、違和感がなくなった。塾の先生の側でも、塾で教えるのとは違った教える楽しさを感じているという話だった。
池田中学校の先生方とのやりとり
【藤本感想】
一般的に埼玉県でやられている「学校応援団」や「土曜開校」と違うのは、それが教師の主導によるところである。自分にとってはそれが理想だ。やはり、教師が頑張ってこそ、学校なんである。学校、家庭、地域3者が連携し、といわれて久しいし、親学まで飛び出しているが、それはそのどれもが主体になる力を失ってしまったことによる。(もっといえば最後の砦であった「学校」の力をもぎ取ってしまったことによる。)それでいて他者に頼って、いや、はばかってしまい、自らが衰退中だ。
さて、池田中の実践だが、ふつうはこういう展開にはならない場合が多い。伺って感じたことは、池田中のこの試みは、何人かのやる気のある中堅教師と腹の据わった校長がいるところにカギがあったのだ、ということ。 MTPは飲みながらの話で決まったというが、さもありなん。今は飲んで教育談義、教育作戦を練れるということ自体が貴重である。努力できるのも能力のうち、いや、眠るのも能力のうち、というが、飲み会ができるのも能力というか熱意のうちだ。今はやれてもカラオケに流れてしまう。そういう状態(荒れた状態)にあってそういう(実力と熱意のある)教師がいたからこそ、そして、それに協力する教師とやらせて責任は取る上司がいたからこそ、と思った。しかし、それでは学校一般に敷衍(ふえん)化できない。我々は良いことを一般化、普遍化、システム化する仕事なんである。しかし、一方で上から押し付けてシステムにしてしまうと、反発が出て、いい形にはなれない。だからと言って教師の発意を待つのも無策である。待っていては、株を守る、になってしまおう。各校の教師の布陣を敷くのは教育行政だが、まんべんなくそうするのは難しいかも。
DJやDJBそしてETCは、思ったより無理をしないで行われていたように感じる。本当は毎土曜日できたらと思うが、それでは週5日制の意義を無視することになるし、子どもたちの学力差を広げてしまうかもしれないし、だいいち、教師に無理が来ると長続きしない。反発が出たら元も子もない。ペース配分が、「大人の判断」と感じた。
学校は勉強だけをするところではない。そして、本当の学力とは・・・・と問うた後に始まったこの実践は、まさに私が願うところである。自分はそれを天下の中学生と表してきた。教える、という作業は大人一般に魅力あるもので、定年後の大人に生きがいをもたらしたのだろう。それで地域に知り合いが増え、子どもをはぐくむ地域力ができたのだ。それは非常に大きいことだと思う。
自分は、それでも本当は、興味を持たす授業を全生徒に受けさせたい。そして、土曜日の放課後は行事の準備や行事(部活を含む)に充て、昔と同じではないか、といわれるが、月に2回くらいは土曜開校で、それに地域のエッセンスをお願いして、いけないものかと思っている。
時が移り人が変われど、池田中学の教師の思いが、地域に、そして後任の教師たちに伝達され、続いていくことを望みたい。そして、それよりも前に、埼玉県で、子どものためにやろうではないか!! という機運を作っていきたい。
4 小学校区に1つある総合型スポーツクラブ・校庭の芝生化
小学校区にスポーツクラブを作ったというが、その秘訣、その実態は。
また、芝生を進めたいのだが、なかなか進まない。神戸市は進んでいるというがどうなのか?
【概要】
○スポーツクラブについて
阪神大震災で学校は地域のものという気持ちになった。平成12年には「「スポーツクラブ21ひょうご事業」が策定され、平成17年度末までに県下全小学校区827クラブを設立することとした。神戸市内では166校166クラブである。県の補助金としてたくさんの補助金が出された。すなわち、まず1クラブ当たりクラブハウス整備費として800万円、それに運営費として100万円×5年間がでる。そのうちの運営費500万円を神戸市としては10年間に延ばして35万円×10年間と全市的な総合支援事業として150万円に分けて補助している。さらに、市から5万円×10年間。
運営は受益者負担を原則に会費を徴収し、その他に補助を受けるという形だ。クラブハウスは空き教室か外型プレハブ。会員の54%が小学生である。小学校に設置されていることから学校開放と同じような形のようだ。平成22年度で10年目になり補助がなくなったクラブがあり、これからが工夫のしどころだ。
○校庭の芝生化について
港島小学校の場合
18年6月1日〜19年3月末まで
6,1から6,18 散水設備工事、土壌改良工事
6,19 幼・小・中、地域住民による芝生の植え付け
6,20〜8,31 芝生養生期間
9,1 オープニングセレモニー
10.9 冬柴を蒔く
NPO法人「芝生スピリット」に委託して事業を進めた。芝生化面積は5890m2.事業費は2500万円。併せて芝生化することによる子供の心理変化などを同志社大学に研究してもらう。港島小学校は幼稚園、中学校と隣接しており、相互利用が可能。有効活用が期待できた。養生期間は隣の中学校の校庭を貸してもらえた。また、水やり、芝刈り、施肥のサイクルが大切であり、これを地域とともにおこなうことでコミュニティーづくりをするために芝生化した。
cf。平成20年度の芝生管理計画
5月 子どもたちによるポット苗作り。育苗パレットに毎日散水。施肥は10日〜15日に一回。刈り込み適宜。
6月 植え付け前に1日、掘り起こし作業(シャッタリング)。下旬にポット苗植え付け。
10月 オーバーシード作業
・4月〜6月までは冬芝の刈り込みが重要。夏は週1回芝刈り。夏以外は散水は週一回。夏は週2,3回。施肥は1カ月に一回。20kg入りで10〜12袋。
質疑から)
スポーツクラブについて)
・総合型スポーツクラブにすることで、各小学校ごとに多くの種目のスポーツがよりどりみどりで、できやすくなったが、最近は新しい種目を増やそうとしても、小学校の体育館と運動場を基本にしていて、入る余地がない。
また、学校開放事業そのものも制度疲労を起こしている感がある。
・兵庫全体でこの事業は進められているが、神戸のように学校開放中心でなく進めているところもある。また、播磨市などもNPO法人化させて進めているらしい。
・スポーツ少年団との関係をきいてみた。可能な限り声掛けしてスポーツクラブの一員になってもらっているとか。しかし、入らない種目もある。
校庭の芝生化について)
・メリットはある。が、デメリットもある。育成機関には一時的、部分的に使用禁止にならざるを得ない。また、サッカーやバスケットをすると禿げてしまう。これは避けられないようだ。
スラグ入れ→土入れ→ティフトンミヤコのほぐした芝をみんなで敷く→オーバーシード(冬芝)を半面蒔く2〜3週間養生期間必要
・油断をすると2年で元の木阿弥になる。
・排水施設については神戸市は必要ない。やると金が足りない。
・小学生自身により維持管理はさせられないものか? 15年前にチャレンジしたが、残ったのは1つの小学校のみ。後は芝生がなくなってしまった。難しいと思う。
(これについては造園業の議員から異議あり。やればできるはず、とのこと。)
・財政厳しき折今後も進めるのか、と問うと、建設費はもつが維持管理費は出ないでしょう、との答えだった。
藤本感想)
小学校区に一つのスポーツクラブということは、それほど本格化しないということも意味するのだと思った。市に一つならそこに人が集まり、専門的なこともできよう。兵庫のそれはそういうことを目指したのではなく、小学校区の人々が、スポーツを通じて懇親できる場(クラブハウスと地域スポーツクラブ運営委員会の存在)をもって、絆を深めよう、としたのだと思った。数年前に「ふくのスポーツクラブ」を視察したが、それとは違うものを目指していた。既存団体との軋轢がいつも話題になるが、神戸の場合、既存団体と一体化している感じだから、違和感はないのではないか? 県の姿勢として補助金の付け方が半端でなく、すごい。これこそが県の方針を著わす政策的投資である。さて、そもそも論であるが、埼玉県は「ゆとりとチャンスの埼玉プラン」において23年度末までに各市1つで71クラブできることを目指しているが、スポーツクラブ構想は花火のような存在になってしまった感がぬぐえない。国もやる気があって継続中なのだろうか? プロを意識した「学校体育」に代わる存在としてのスポーツクラブ。そして、健康を意識した「生涯スポーツ」普及としてのスポーツクラブ。学校体育があるのに敢えて無い国の真似をして、換骨奪胎をはかるのはいかがなものか、と今も思っているのである。
芝生化については、神戸は進んでいる、ポット式は簡単で良い、と聞いていたからさぞかしと思いきや、そうでもなかった。神戸市内も芝生化の実績は幼稚園5園、小学校6校、中学校1校の全12校だけだった。そのうち校庭全面は港島小1校のみ。幼稚園なら4園が園庭全面だが。埼玉県でも緑の基金を使って校庭の芝生化を奨励している。28小学校と3中学校で芝生化が実施されているが、こちらも鳩ヶ谷市の里小学校と川口市の芝小学校とさいたま市の谷田小学校が校庭全面だ。が、あとは外周が多い。(保育園、幼稚園はもっとだと思うが調べていない。)
【視察を通して思ったこと】
各視察場所として私たちを受け入れてくださった先生方、職員のみなさん、そして、副委員長の諸井真英県議始め文教委員の各メンバー、議会事務局の中村氏に感謝である。学校現場をちょっとくらい見ても、何もわかってもらえないよ、そして批判されるのが落ち、だから来てほしくないのさ、まして、荒れている現場など…というのが教育界の一般意識である。しかし、荒れている現場だからこそわかる、ということも多々あるのだと自分は思っている。完成した現場を見ても、そこまでになった限りなき日頃の教育の数々など、わかるはずがない。完成された現場こそ教育界以外の人が見たら、ソレガ当然、ハイ其レマデ、なんである。今回受け入れてくださった学校の中には、厳しい状況もそのまま見させていただいた。それは厳しい状況でもこれだけやってきた、という自信と、だから教育行政も見てくれ、そして、呼応してほしい、という思いがあるのだと自分は感じる。状況は変わっていく、実践こそ状況を変えていくのである。各学校に感謝の気持ちでいっぱいである。各視察場所では、質疑が集中して30分以上延長された。池田中のMTPのみなさんは畑でずっと待っていてくださったようだ。陰山先生にも無理して話していただいた。朝もモジュール授業視察のため早くに出立した。旅館のおかみさんには望外の朝飯早出しにご協力いただいた。遠県視察前には埼玉県の状況を調べるべく下調べ会も催したが、全議員出席で常に熱のある質疑、意見交換が行われたこともありがたい。この視察を経て、7月議会をむかえた文教委員会であった。正式には第1回の委員会だったのだが、全く初めての気がしなかった。残り7カ月の文教委員会、今回の視察で思ったこと、感じたことを大切にし、教育行政としての形にできたらよいなと思った。
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