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平成17年5月14日 第四号
埼玉県の進路指導
*平成17年3月予算特別委員会の内容の再掲です。
受験地獄がまだまだ叫ばれていた平成4年のことであった。偏差値を狂信し、偏差値が高くないという理由で自らの可能性を見限ってしまう子ども、保護者がいたり、偏差値に寄りかかった安易な進路指導をする教師がいたり、そして、業者テストの、しかも、学期中の何回かの偏差値によって私立入試の合否が半ば確約され、左右されるという事態が起こっていた。それを重く見た埼玉県は竹内教育長は『埼玉県は業者テストから手を切る。子どもの未来につながる本来の進路指導を中学校はする。私立高校にも偏差値による入学選抜相談はさせない』と宣言した。
その動きを正しいものとして、文部省は平成5年、
・学校は業者テストには一切関わってはならない(学校で授業をつぶしてやるなど論外)
・ 偏差値を使った進路指導はしてはならない
・ 高校側も偏差値などの結果を求めてはならない
・ 業者テストだけでなく、学校が作成した実力テスト、県や市などが作る公の学力テストも、その結果を蓄積して進路指導に利用するのはままならぬ。
というような通達を全国に通知した。そこで、全国一斉にこれに従ったわけである。
先駆けを切った埼玉県は、校長会が「私立の進路相談(と称して実際ある程度合格の可能性がそこで決まってしまう)には学校として、いくのはやめよう」と決め、よその都県も誘ったそうである。しかし、それによその都県は乗らなかった。
さて、文部省に公の学力テスト、いや、学校作成の実力テストも、その結果を蓄積して進路指導に利用するのはままならぬ、といわれてしまった各中学校では、実際の進学先決定に際して大きな母集団内での生徒の位置がわからないのみならず、高校がどのくらいの難易度があるか、も測る手段を失ってしまった。敵を知らず己も知らず、なのだから百戦危うく、心許ないばかり。
また、生徒が何になりたいか、を基本にすえた本来の進路指導を試みるが、しかし、「中学卒業段階では何になりたいかはまだ決まっていない」とか、「まずは実力に見合ったできるだけ学力の高い(とされる)高校に入りたいだけ」「とにかくこれらの高校を受けて大丈夫かどうか指導してほしい」という生徒や保護者の本音の要望に応えることができず、ただただ、中学校は信頼を失っていった。
一方、業者テストと手を切ったのは学校だけであったから、業者テストは依然として自己の学力を知る一番確かな手段として、休日に中学校外の会場テストとして今も頼りにされている。
なお、県内中学校の教師が私立高校の進路相談に行くことからも手を引いたことによって、進路相談にはその学校を受験希望する生徒か保護者が行くことになった。生徒に自己決定、自己責任の場に立たせ、高校側にも生徒を早くに見させるという点では良い面もあったと思う。しかし、私立高校にとっては相手が中学教師でなくなり、ある意味で公的監視から逃れたことにより、「もし受けているのなら北辰テストの結果も持ってきて来てください。」と言う誘惑を私立に与えてしまうことになったのではないかと、私は想像する。
学校対学校で行っている神奈川や東京は、内申点だけできっちり相談されているというのが何よりその表れではないか。
そして、以上のさまざまな要素が絡んで埼玉県の生徒だけが偏差値を要求され、中学校がまったく信頼されなくなり、塾の先生が活躍し頼りにされ、私立を受験するなら業者テストは必須、の状態を作り出してしまったのである。業者テストや偏差値から最も早く手を切り、最も遠くに追いやったはずの埼玉県が最もしっかりと業者テストと偏差値を養殖してしまっているのはあまりにも皮肉である。
知り合いの東京都内中学の教師によれば「内申点だけできっちり相談しているし、保護者から進路に対する信頼はされているし、生徒は業者テストなんか受けていない子もたくさんいるよ。」と言われた。「まあ、塾の先生は先生で私立高校に対し進路相談に行っているみたいだけどね。」の落ちをつけて・・・。
○ 最後に思うこと
平成5年から10年以上がたって、社会の状況もまた変わってきた。平成15年の私の質問に、文部省の通達を恐れず「学校で作る実力テストの結果を蓄積して進路に利用しても良い」と教育長が答えてくれた。また、全生徒が学力テストを行うように変わり、そして「学力テストの結果を進路の判断材料に利用してもいい」と教育長が述べてくれるようになった。文部科学省も、今一度進路学習に対する指針は?ときかれたら平成5年のときとは違う指針をいうのではないか?
私立高校による青田刈り的な進路相談会はこれからもなくならないだろう。というのも、これは高校側にとっても保護者にとっても、そして中学側にとっても、「悪であるが必要」なものになっているからだ。また、私立高校にただ「偏差値は使うな」と言っても、今のままでは言うことは聞いてもらえないだろう。というのも、進路相談はより確かな材料がほしいものだから。中学校ごとに作られる、しかも、昨年から絶対評価になってしまった、信頼性の少ない通知表のコピーや内申点だけで相談(ある程度の確約)に乗りたくはないのは当然だからである。
だからこそ、今こそ、埼玉県教育委員会は責任を覚悟して、思い切った改革に動くべきである。理想の進路指導を目指しつつ、しっかと現実を見つめて改革するのだ。誰かの代で手をつけなければ、問題は解決されない。それが、稲葉教育長ではないか。
最後に思う。
塾に通ったり業者テストを受けないと進路において不利益をこうむるような義務教育では、絶対いけない。なんとか力を尽くし、改革し、そして、学校と地域、保護者が信頼しあえる、あったかい環境を作りたい。


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