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平成15年7月30日 第一号
業者テストの入試相談

 私が教師だったころ…埼玉県のほとんどの中学校では業者テストを校内で年に1回から数回行っていました。そして、生徒本人には埼玉県内での自分の成績(得点、順位、偏差値など)の結果が答案用紙とともに返却され、学校側にもその資料が渡されていました。また、学校側には自分の学校やクラスの県内での偏差値も報告されていました。それをみてこのクラスは国語が他の教科に比べて弱いから力入れなくちゃ、とかあの先生が教えているクラスのほうが全般的に成績がよい、どう教えているんだろう、負けられないぞ、とか思っていました。また、この子は他の教科に比べ国語だけが弱い、原因は何なのか?自分の教え方はどうか? など考えたりしました。また、担任する生徒には「君はこの教科が強いから伸ばして…」などアドバイスに使ったものでした。その点では、重宝したものです。

 しかし、それだけならよいのですが…県内、および、都内私立高校は、その業者テストの偏差値(2学期の最新3回くらい)を使って、入試の合格確約をしていました。中学校の教師は、生徒の個人成績表をもって、高校に出向き、生徒を是非合格してくれるよう相談に行ったものです。偏差値だけでなく、そのときは生徒の部活での活躍やクラスでの活躍状況も何とか伝え、必死に売り込んだ(生徒を売り込むというのもなんですが)ものでした。というのも、当時はそういう相談会に出席して確約をもらっておかなければ、当日受験しても、よほど他の生徒よりよい成績を取らない限り合格しないといわれていたからでありました。

 でも、本来は入試で筆記テストをやるなら、そのときの点数がメインで合否が決まるのが常識です。中学時代の学業成績も参考にしたいなら、高校側に提出する「内申」があるのですから、それで十分なはずです。なのに、よりによって、中学時代の業者テストの成績で、大方の合否が約束されるなんて、これはやはりおかしなことなわけでした。

 そこで、平成4年、埼玉県の時の教育長、竹内教育長は、その矛盾にメスを入れます。「業者テストの結果を高校に提示しない」と宣言し、業者テストの偏差値を高校に提供することを拒否し、そこから私立高校に業者テストによる青田刈り(確約行為)をさせないように策を講じました。 その後、それは『偏差値』が悪い、という論議に変容しながら、国が動くことになります。
 文部省は平成5年2月、「中学は業者テストを高校に資料として提示してもならない。また、学校は業者テストに関与してはならない。」「私立高校は業者テストの成績を中学校にも実施会社や塾に対しても求めてはならない。」という趣旨の通知を、各都道府県教育委員会や知事宛に出すことになります。

 各中学校は業者テストから一切手を引くことになりました。問題としては、今まで使えていた県内規模の大規模な中での成績がわからなくなり、自分の学校内での規模の小さな実力テストなどをもとに進学指導するしかなくなったということでした。その点で資料不足はいまだに続いてはいるわけですが、克服される範囲内の問題だと思います。問題なのは「それでも依然として高校は業者テストをもとに確約行為をしている」というところにあります。それによって、いくら中学校側で資料を厚くしても、保護者からすればやはり塾が進路指導で頼りであり、公立中学校は信頼されない、ということになってしまうのです。

 高校からすれば、確かに内申は相対評価から絶対評価になり、ますます、比較の上で相対的な学業成績は知ることが出来ない状況になってはいます。しかし、業者テストによる青田刈りが続けられている限り、平成4年に埼玉から始まった改革は骨抜きになのです。いや、改革以前より悪い状態とも言えるでしょう。公の中学校だけが蚊帳の外に外れ…、これでは中学校の進路指導に対する信頼だけが壊れただけ、の結果にしかなっていません。この現状を放置していてはよくないのです。 

 青田刈り、は或る意味で、高校、中学、生徒、保護者それぞれにとって必要悪の要素を持っていました。高校としては、「いい人材を確保できるし、受験者数が増え、受験料で経営が安定する」、中学としては「すべり止めが確実にあるほうが指導しやすいし、安心」、生徒や保護者にとっては「安心して受験できるし、挑戦も出来る」という意味でであります。しかし、埼玉県教育局は、「それはよくない」と改革のメスを自ら入れたのです。ここは是非、現実を直視して、改革の言いだしっぺである埼玉県教育委員会にがんばってもらわねばなりません。私立学校を管轄する県総務部も連携してがんばっていただくことを期待し、見守っていくつもりです。

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masato@gutsfujimoto.com
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